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源氏物語を描く魅力

一枚の繪 4月号
Apr. 2009 Vol.452
源氏に導かれるきっかけとなったのは、小林秀雄の講演テープで、本居宣長が生涯をかけて『源氏物語』を愛し、研究したことを知ったことでした。それで円地文子訳の「源氏」を読んで「雅び」こそ日本美の源流と、薄絹の感触のようにしなやな、曲線に満ちた美しさを描いてみたくなったのです。

制作中の高橋天山先生
竹内寛子氏が「源氏物語中、もっとも幽艶な一場」という「蛍」の帖を描いたのがはじまりで、「夕顔」、「空蝉」、「桐壺」と続け、昨年の院展には再び「蛍」を四曲一隻屏風に描いてみました。五月雨の夜、玉鬘と蛍兵部を密かに対面させるくだりで、たくさんの蛍を放し、その光で玉鬘の美しい姿を見せるという場面です。

源氏絵といえば藤原隆能の作とされる国宝の『源氏物語絵巻』。現存する最古の物語絵巻の画格の高さに圧倒され、山のあまりの大きさに逡巡する気持ちでしたが、いまは千年を経ても描き継がれ生き続けてきた源氏物語の時空を超える魅力を愉しみながら、「絵巻」として完成させたいと考えています。
 
高橋天山「蛍 源氏物語抄」
 
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