Spotlight-画家インタビュー 王 軍Pickup

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「日頃の風情(デルフト)」 水彩8号大  264,000円

王 軍「日頃の風情(デルフト)」 水彩8号大  264,000円

「梅雨の季節」 水彩5号大 165,000円

王 軍「梅雨の季節」 水彩5号大 165,000円

「若葉の頃(白馬)」 油彩6号大 198,000円

王 軍「若葉の頃(白馬)」 油彩6号大 198,000円

「黄昏(モレ・シュル・ロアン)」 水彩6号大 198,000円

王 軍「黄昏(モレ・シュル・ロアン)」 水彩6号大 198,000円

「窓側」 油彩4号 132,000円

王 軍「窓側」 油彩4号 132,000円

「秋色(静岡)」水彩6号大 198,000円

王 軍「秋色(静岡)」水彩6号大 198,000円

「緑映(蘇州)」水彩6号大 198,000円

王 軍「緑映(蘇州)」水彩6号大 198,000円

「春彩」水彩5号大 165,000円

王 軍「春彩」水彩5号大 165,000円

-展覧会情報

王 軍水彩展2025-展覧会情報

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卓越した筆さばき、水遣いで、国内外の風景や季節の花を描く王軍先生。そのみずみずしく趣きある水彩画にはファンが多く、ギャラリー一枚の繪での個展も今年17回目を迎えます。水彩の魅力、作品で表現したいことや大切にしていること、今年の個展に向けてのメッセージなどを伺いました。

王 軍先生

水彩独特の透明感

Q.水彩画を制作するようになったきっかけを教えてください。また、水彩ならではの魅力をどのように感じていますか。
王:日本に来る前に上海の大学で、水彩より油絵とガッシュをよく描いていました。そもそも水彩の描きはじめは小学生からです。もともと水彩が好きで、向こうの大学を卒業して仕事をしながら、ちょこちょこ水彩も描いていました。日本に来てからは時間の余裕をもって集中的に水彩を描くようになりました。
もちろん他の画材もそれぞれの良さがありますが、水彩最大の特徴は透明性にあります。紙表面の水の乾きのタイミングによって、予想内と予想外のにじみやぼかしの表現ができ、水彩ならではの趣を生み出します。多種多様な表現をもち、紙の白を生かして色を重ねることで水彩独特の透明感を描きだせます。それは水彩の魅力と言えると思います。

「印象」を絵として残す

Q.風景画と花の作品で表現したいこと、大事にしていることをそれぞれ教えてください。
王:風景画で表現したいこと、大切にしていることは3つあります。ひとつは、構図のバランスです。視線の流れや奥行きを意識し、自然な遠近感を出すようにしています。ふたつめは、光や空気感の再現です。水彩の透明感を活かし、時間帯によって変化する光や空気中の湿度や温度、風の気配など目に見えない雰囲気を描きたいと思っています。3つめは、自然の美しさ、印象です。自然の中で出会った感動や心に残った景色を大切にし、その「印象」を絵として残すことを重視しています。
花の表現では、「ありのまま」を再現するのではなく、花の持つイメージや雰囲気を大切にしています。主役となる部分には力を入れてリアルに描き、脇役の部分は意識的に省略して抽象っぽく表現します。背景の色調や、花と葉の関係性にも気をくばりながら、ウェットインウェットの技法を用いて、水彩ならではの柔らかさや透明感を引き出します。絵の中に生まれる偶然のにじみや色の重なりが、花の儚さや生命力を表現してくれると感じています。

変化したこと、変わらないこと

Q.ギャラリー一枚の繪での個展は今年で17回目となりますね。この17年間に変化してきたこと、また、ずっと変わらないことは。
王:17年の間に少しずつ変化しています。例えば水の乾きのタイミング、筆さばきと色使いなどのコントロールの進歩を実感しています。色合いについては、以前より色の数が増えました。特にグレー色の扱いにこだわっています。モチーフはあまり大きく変わらず、海外と日本の風景、そして季節の花の作品を中心に出品しています。
私の水彩作品は具象的なモチーフを扱いながらも、単にリアルに描写することを目的とはしていません。対象をそのまま写すのではなく、自分自身の感覚や心に浮かぶイメージと重ね合わせながら、そのものの本質や印象を捉まえるように心掛けています。透明水彩ならではのにじみやぼかし重なり、繊細な色の変化を活かしながら、目に見える形と心の中で感じた形と調和させることで、自分なりの視点からその存在を表現していきたいと思います。

季節の移ろいや瞬間の風情

Q.近作について
王:「日頃の風情(デルフト)」-新緑がまぶしい初夏のデルフト。昼頃の柔らかな光が木々の間から差し込み、若葉は一層の透明感とみずみずしさをまといます。奥行きには、街の象徴ともいえる教会の塔が静かに顔をのぞかせています。両側には古い建築が並ぶ明るい道を囲み、木陰にはそっと車が停まっています。道の間を一本の川が流れ、その奥には小さな橋が川をまたいでいます。建物や木々の姿は川面に映り、水面は光を受けてきらきらと輝きながら、静かに時を刻んでいます。日常の中にある静けさと美しさ、時間帯よる瞬間の風情を水彩の柔らかなにじみと色彩で表現しました。

「梅雨の季節」-紫陽花は一つの大きな花のように見えて、実は無数の小さな花が集まってできています。水彩で紫陽花を描くとき、私はその全てを細かく描写するのではなく、塊としての印象と個々の花の存在感をバランスよく表現することを大切にしています。塊の中から一輪か二輪ぐらいをウェットインウェットの技法でリアルに描き出し、他の部分はグラデーションを活かしながら省略的に描きます。葉や背景についても、背景の色が乾ききらないうちに色を重ね、にじみやぼかしを生かした自分ならではのやわらかな表現で作品を仕上げました。

「若葉の頃(白馬)」-若葉が芽吹く季節、白馬の遠くの山々にはまだ雪が残り、春と冬が静かに交差しています。川の両側には、命の息吹を感じさせるような瑞々しい緑が広がり、雪解けの清らかな水が遠方から静かに流れてきます。耳を澄ませば、水のせせらぎがかすかに聞こえてくるような気がして、美しい自然の情景が心をやさしく癒してくれます。この季節の移ろいを水彩の透明な色彩とにじみを活かして描き出しました。

「黄昏(モレ・シュル・ロアン)」-フランスのモレ・シュル・ロアンの町、夕暮れの柔らかな光が、川辺に立ち並ぶフランス式の古い建物をやさしく染め上げます。建物の明るい面と影の部分とのコントラストが、時の流れを静かに物語るようです。そよ風に揺れる岸辺の柳は、まるで時間が止まったかのような静けさをたたえ、建物や木々の影は川面に映り込んで、ゆるやかに流れていきます。その風景の美しさは、見る者の心に深く残る印象を与えてくれます。そのような雰囲気の作品を描きました。

個展に向けて

Q.今回の個展に向けてメッセージをお願いします。
王:ヨーロッパと日本の風景、季節の花をモチーフに新作を出品します。個展を機にご来廊のお客様と作品を通して交流しあい、またお客様のご感想を聞かせていただける貴重なひと時ですから、皆様のご来廊が楽しみです。

◎王 軍 おう・ぐん
1950 上海に生まれる
1976 上海戯劇大学美術学部卒業
1991 現代洋画精鋭選抜展入賞
1992 東京芸術大学色彩研究室研究生修了
1993 浅井忠記念賞展優秀賞(千葉県立美術館作品収蔵)
2006 王軍展(東京会館ギャラリー)
2008 ギャラリー一枚の繪にて個展(以後毎年、20年除く)
他個展・グループ展多数
イギリス・フランス・オランダ・ベルギー・イタリア・スイス・ドイツ など海外取材多数
2009~2019 クラブツーリズム水彩講座講師担当
2010~2012 雑誌『一枚の繪』に王軍水彩教室の連載を担当
現 在 王軍水彩教室、楽水彩教室(横浜関内)、NHKカルチャー町田教室、大阪ATCエイジレスセンター水彩コンベンション、調布カルチャーセンター、新百合ヶ丘産経学園、横浜美術友の会絵画教室、目黒カルチャースクール 講師担当。