Spotlight-画家インタビュー 山本佳子Pickup
山本佳子「支度」 油彩100号 2,420,000円
山本佳子「桃のある静物」 油彩P6号 231,000円
山本佳子「あやとり」油彩3号 132,000円
「日常には変化や新たな感動があり、その中から私の絵が生まれます」とおっしゃる山本佳子先生。油彩やガッシュ(不透明水彩)で描き出す風景、人物、花や静物のその作品には、優しさの中に、日常のなかに見出す感動とたぬまず表現の世界を追求しつづける作家の精神が込められています。二度目の日展特選のこと、初めてのイギリス取材、恩師への想い、この秋にギャラリー一枚の繪で開催される個展に向けてのメッセージなどを伺いました。
山本佳子先生
二度目の日展特選
Q.昨年2024年は二度目の日展特選おめでとうございました。この特選作品「支度」(油彩100号)の制作意図をお聞かせください。
山本:制作で意図したことは、「やさしさ」と「厳しさ」、「単純化や省略によるシンプルな構成」と「複雑であいまいな感情や雰囲気」など対極にあるものです。大作では特にそれを意識しています。苦労したところは、背景と人物の表現の折り合いでしょうか。
二回目の特選はとてもうれしかった一方で、絵を描き続けることに責任というか、重みを感じています。
冬のイギリスへ
Q.今年1~2月のイギリスの旅はいかがでしたか。
山本:イギリスに交換留学中の娘が帰ってくる前にと、12日間、ヨークを拠点にロンドン、ケンブリッジ、スコットランドのエディンバラを取材しました。イギリスの光は日本よりも黄金色というか、そんな印象です。いたるところにさまざまな大聖堂があり、路地が好きなのでとにかく歩き回りました。雨の日の表情もよいものですが、低い横から差す強い日差しと建物や人物の長い影が作る風景も面白く感じました。
心にあり続ける師の教え
Q.昨年ご逝去された師・吉崎道治先生との思い出をお聞かせください。
山本:吉崎先生の門をたたいたのは2007年、最後にお会いしたのは昨年6月の終わりでした。コロナもあって長くお会いできない時期もありましたが、十分教えていただきました。
絵の中だけでなく「絵からこちらは描けているかい?」などと時々難しいことも言われました。一水会展や日展の絵が上手くいくと会場でお会いした時、「面白かったねー」と言われて、にこにこしてくださいました。まずいときは「君はうまいからね」と言われることもあり、これはダメだということでした。
「基礎基本なしはダメ、基礎基本だけはもっとダメ」「再現ではなく、表現すること」
厳しく、そして海のように大きく、やさしい師匠でした。師の教えは深く、これからも私の心にあり続けます。
Q.近作について
山本:「卓上のユリ」-ユリの中でも特に好きなのは、ササユリやこのタカサゴユリのようなひっそりと咲くユリたちです。よく見るとそれぞれに大きさ、おしべの色にも相当に変化があり、長い花形にも美しさを感じます。季節には庭からいくつか切ってきて花瓶に投げ入れておくのですが、それが絵のように見えるときがあります。この作品の背景も制作中の絵でした。
「ヨークの風」-娘が通っていたヨークの大学前の情景です。留学期間が終盤に差し掛かかり、久しぶりに会った娘は、代え難い経験をしたことが表情に出ていましたし、身にまとってもいました。娘が過ごした風景と一緒に描いてみたいと思いました。
「ケンブリッジの夕暮れ」-イギリス滞在中、午後四時ごろに見たケンブリッジの夕焼け。大変美しく、日本の夕焼けとは違った何とも言えない黄色みの少ないピンクの色味を持っていました。この色味がなかなか難しかったです。
「バラの花束Ⅱ」-お花屋さんのバラも美しいですが、庭のバラは強い香りと可憐さを持っています。赤いバラは教室の方が持ってきてくださったモチーフです。感激して皆さんと一緒に小さな絵を描きました。気持ちが動いたときにすぐ感動を絵にしたいと思います。
モチーフの良い「気」を受けて
Q.今回の個展に向けてメッセージをお願いします。
山本:「絵描きの日常」というテーマの通り、私の絵は日常の感動から生まれます。それが音楽でいうとオーケストラのようなときもあれば鼻歌のようなときもあります。いずれも描きたい衝動にかられ、素直に制作してきました。私にとって出会うそれらの対象からはいつも良い「気」のようなものが感じられ、それを受けて描いてきたように感じます。どうぞご高覧ください。
※より詳しいインタビューは、『一枚の繪』2025年10・11月号をご覧ください。
◎山本佳子 やまもと・よしこ
岡山県に生まれる
1994 岡山大学大学院修了
岡山大学技術補佐員(~’96)
1996 日展初入選(以後21回入選)
1997 一水会展新人賞
1999 一水会展一般佳作賞(’00)
2008 日展会友
2012 一水会展山下新太郎奨励賞
一水会会員
2017 一水会展会員佳作賞(’19)
2020 日展特選(’24)
2023 一水会展一水会優賞
現在 日展会友 一水会委員

