Spotlight-画家インタビュー 大原行裕Pickup

大原行裕「卓上」 水彩6号大 254,000円

大原行裕「アジサイ」 水彩5号大 220,000円

大原行裕「ローカル線」 水彩8号 352,000円

大原行裕「川岸」 水彩6号大 254,000円

大原行裕「雨ふりの日」 水彩6号大 254,000円
愛着ある器物や自ら育てた花木、何気ない風景などをモチーフに、深みある色彩とのびやかなフォルムで水彩作品を描く大原行裕先生。モチーフのこと、今年の個展のテーマである「にびいろ」について、個展に向けたメッセージなどを伺いました。
大原行裕先生
こだわりの器物、庭で育てた花や木
Q.お気に入りのモチーフについて教えてください。
大原:モチーフは、どこにでもあるような瓶や器などの静物。ちょっと高価な物もあれば、安いものもあります。購入する時、形や色にはこだわり、生活で使うというよりあくまでいつの日か絵にならないかと思って集めています。
そこに庭の花を生けてみる。庭の花や木は、絵になりそうなものを育てていて、春には春の、夏には夏の植物をシンプルに、水差しとともに描く。種や苗から育てたものは、いつも愛らしい。ただそれだけのこと。何もいつもと変わったことはなく、日記をつけるように、紙に記してゆきます。
「にびいろ」の効果
Q.今年の個展のテーマになっている「にびいろ」とは、どんな色ですか。その効果についても教えてください。
大原:にびいろは、漢字で書くとまさに「鈍色」。ねずみ色、灰色です。平安時代から使われている呼び方で、今はグレーという響きのほうが一般的かと思います。
しかし、どうもグレーとは、感覚的に違うかなと思っています。dark color。ニュアンス的には、汚れているというほうが近いかもしれません。
にびいろは、発色をコントロールするため、水彩画には必要となることが、僕には多くありますが、不必要な作家の方には、あまり意味のない色。学ぼうとか自分の色に加えようとか、思わないほうがいいかと。にびいろの前に砂色を作る段階があることを添えておきます。
新作に描いた橋
Q.近作について
大原:「ローカル線」-モチーフは小湊鉄道です。アトリエから程よい距離にあります。その鉄道の周りの風景を、よく描きに行くのですが、電車そのものを描くのは、今回の新しいところでしょうか。
「川岸」-帯広を訪れた時に、地元の作家たちと一緒に描いた作品です。札内川の河川敷にイーゼルを立て、穏やかな一日を画面に閉じ込めました。遠景には鉄橋がかかり、手前の川原には、背の低いタンポポの黄色い花と、わた毛の白が小さな歌を奏でているようでもありました。
「雨ふりの日」-今回の個展の出品作は、意識はしていなかったのですが、風景画の中に橋を描いた作品が多くなりました。「白樺」「川岸」「雨ふりの日」など、石の橋であったり、鉄橋であったり、小川を跨いだ小さな橋であったりと。僕の中で自然と絵になるモチーフとして選んでいるのかもしれません。この作品を描いている時、ずっと小雨が降っていて東屋の下で筆を走らせました。絵具の渇きが悪く、パネル張りした水彩紙は常にウエット状態で、まさに水との対話といった感じ。雨に濡れる色づいた景色は、鮮やかに見えます。冬に近づく秋の色は一見華やかなのですが、その奥に、にびいろが、隠れているようでした。
個展に向けて
Q.今回の個展に向けてメッセージをお願いします。
大原:ギャラリー一枚の繪では、2年ぶりとなる個展です。2つ歳を重ねた分、少しは動いていると思うのですが、続けて見ていただいている方にはどう感じてもらえるのでしょうか。
いつしか身についてしまった、自分の制作スタンスが、ストレートに出ていると思っています。いいのか、悪いのかは、わかりませんが、それが今の僕の絵であり、ギャラリーの美しい白い壁に愛想よく掛かっているはずです。絵を見ていただくことで、笑顔が会場にあふれたら幸せです。
◎大原行裕 おおはら・ゆきひろ
1967 千葉県に生まれる
1986 三橋兄弟治に師事
1987 水彩連盟展出品
1992 水彩連盟展新人特別賞 水彩連盟会員
1993 浅井忠記念展出品
1994 第1回水彩展OHARA大賞(’95~’98招待出品)
1999 水彩人創立に参加 青木繁記念賞展出品
2004 水彩連盟展三橋兄弟治賞 千葉市文化新人賞
2005 損保ジャパン美術財団選抜奨励展出品
2006 水彩連盟展永井保賞
現在 水彩人同人