Spotlight-画家インタビュー 才村 啓Pickup

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澄明な色彩とリズミカルなタッチで国内外の風景を描く才村啓先生。近年のヨーロッパ取材のこと、大切にしている国内のモチーフ、今につながる修行時代について、制作のスタイル、今年の新緑の季節に開催される個展に向けてのメッセージなどを伺いました。

才村 啓先生

新緑のヨーロッパ

Q.近年取材されたスイス、オランダ、ベルギーはどんな印象でしたか。
才村:一昨年に再訪したスイスでは、美しい山並みや花々が咲く風景の中にも人びとが暮らす温かみが共存しており、感動する風景にたくさん出合いました。高級リゾート地サンモリッツの湖畔を散歩する人々を点景に配した作品「散歩道-St.Moritz-」は、青色が基調となっており、サンモリッツの透明感が出ていれば嬉しく思います。
昨年初めて訪れたオランダとベルギーも期待以上の感動がありました。「若葉の街-Amsterdam-」は、運河都市アムステルダムの歴史ある街なみと運河、緑との見事な調和に感動して絵筆をとった作品です。「光の水辺-Bruges-」は、こだわった新緑の季節のブルージュの緑に注目していただきたいと思います。

残雪のアルプスと富士

Q.日本の風景で大切にしているモチーフは?
才村:日本では長野の風景を長く描いてきました。残雪のアルプスは何度描いても飽きることはありません。近年、富士も大切なモチーフとなっています。
都市で生まれ育った私にとって、街の景色は馴染みのあるもので、絵を描く時もスッと自然体で筆が進みます。一方、田舎の風景は都会にはない安らぎを感じます。かつて風景の修業のために滋賀や長野に移り住んだのも、自然への憧れがあったからです。滋賀では電動自転車に乗り、あちらこちらの田園風景をひたすら描きました。長野県では軽自動車で100号のキャンバスを二つに折り畳み、現場で大作を何枚も完成させました。
技術を磨くには、自然に感動し、それを写しとるしかないと思い、20代、30代の一番吸収力のある時期に写生に励んだことは、何よりの財産を生むことに繋がりました。

現場制作とアトリエでの仕事

才村:今でも写生にはよく出かけています。完成作品として発表する絵は、現場でのスケッチや写真などの資料をもとに新たに描きます。このような資料から描くことは、私の場合、アトリエでじっくり構成を練り上げ、モチーフから得た感動をキャンバスに定着させるために、無くてはならない方法です。
しかし、写生は常に行わないと腕が鈍ります。自然を前にキャンバスを立てることは、観察力を磨き、画面の構成力を高めることでもあります。そうして写実的な技術修練を常に行いながら、資料から発想を得てじっくり創り出す絵がようやく描けるのだと感じています。

音楽が聴こえてきそうな絵

Q.今回の個展に向けてメッセージをお願いします。
才村:今回は、この2年間に取材したアムステルダムとブルージュ、スイスの風景をメインモチーフに、信州風景、楽器をモチーフにした静物画も出品します。
全体を通して音楽が聴こえてきそうな絵を目指しました。制作中は常に音楽をかけ、イメージを高めています。私の絵画から音楽が聴こえてくると感じていただけたら嬉しいです。

※より詳しいインタビューは、『一枚の繪』2025年4・5月号をご覧ください。

◎才村 啓 さいむら・ひらく
1975 大阪府に生まれる
2001 大阪芸術大学美術学科卒業
池田清明に師事
研水会入選(以後毎年入選)
一水会入選(以後毎年入選)
2005 日展入選(以後18回入選)
2008 一水会新人賞
2014 一水会損保ジャパン日本興亜財団賞
2015 一水会精鋭展出品(’16、’17)
一水会選抜展出品(’16、’17)
2016 日展特選
現在 一水会会員 研水会委員 日展会友