Spotlight-画家インタビュー 久保博孝Pickup
久保博孝「旭岳遠望(山形県長井市)」 油彩6号 330,000円
久保博孝「獺祭図-仮面」油彩8号 440,000円
久保博孝「六月のラベンダー風景」 油彩6号 330,000円
日展、一水会でも活躍されている久保博孝先生。緻密な構図と描写力が光るリアルな写実に託して伝えたい想いとは――。風景画、静物画で表現したいこと、近作について、ギャラリー一枚の繪で開催される個展に向けてのメッセージなどを伺いました。
久保博孝先生
広い大地と空への憧れ
Q.風景画のモチーフとして、描いてみたくなるのはどのような風景でしょうか。
久保:描いてみたくなるのは、広い大地の風景です。生まれが東京の日暮里なので、子どもの頃は空は電柱や電線などの直線に囲まれたものだと思っていました。気に入っている取材地は、北海道や東北、地元の千葉などで、広い大地と大きな空への憧れは今でも変わっていません。
風景画の制作で特に大切にしているのは空気です。季節、気温、湿度、風などを表現できたらと、格闘の毎日です。どんなモチーフでも自画像なので、客観性を忘れることなく、自分の感動を伝達できたらと思っています。
命あるものの無常
Q.静物画で表現したいこと、大事にされていることは?
久保:静物画を描く時には、安定した構図と黒い色を特に大切にしています。
一番伝えたいのは「無常」ということです。命あるものは必ず終わります。そして善と悪、あるいは美と醜、陽と陰など相反するものが存在し、共存することを拒んでいますが、それらを表現することに意味があると思っています。
平和への想いを託して
Q.作品に託する想いについてお聞かせください。
久保:私は昭和26年に日暮里に生まれました。父は戦争に行き、近所にはバラック建ての家もたくさんありました。ほとんどの人が貧乏でしたが、活気にあふれていました。
あれから、いろいろなことが起こりました。自然災害、世界各地での戦争…。日常生活の中で、対岸の火事が今や隣の家に燃え移ろうかという時代です。作品を通して自分の心情である「平和」の尊さが少しでも伝わればと思い、制作しています。
Q.近作について
久保:「大地の譜(五所川原)」-広い大地に垂直に立つ木の構図が好きで、10年以上温めていました。今こそ描きたいという気持ちが強くなり、制作しました。春の緑を工夫しました。スケッチしていると小犬が足元にまとわりつき、「シロ」と名付けて一緒にスケッチしたことを思い出します。
「春」-姪から贈られた花を妻がガラス器に差してくれました。窓際に置くと春そのものを感じることができ、心の中まで春になりました。特にスイトピーは春そのものでした。
「双樹・北の大地」-取材地は北海道滝ノ上の芝桜です。芝桜は全国各地にありますが、北海道の花たちは別格だと思っています。春を待つ道民の希(ねが)いがそこにあるからだと思います。2本の白樺は助け合う美しい人間愛として象徴的に描いています。あの清々しい空気は内地(本州)では味わえないものです。
「印旛沼晩冬」-ライフワークとして印旛沼をずっと描いています。アトリエからも30分ほどの距離にあり、私の心の癒しの場です。特にこの季節が好きで、冬を耐えて春を待つ姿はとても美しいです。
「優しさ」をテーマに
Q.今回の個展に向けてメッセージをお願いします。
久保:今回のテーマは「優しさ」です。観る方が「こんな所でのんびり休みたい」と思えるような風景画を中心に、静物、花の作品も出品します。
近頃、「伝達」という言葉を一番大切にしています。どう表現したら鑑賞者に自分の言葉が、心が伝わるのか…「絵の上手さは描いた時間に比例し、絵の良さは考えた時間に比例する」ということを信じて、愚直に制作していきたいと思っています。
※より詳しいインタビューは、『一枚の繪』2025年8・9月号をご覧ください。
◎久保博孝 くぼ・ひろたか
1951 東京都荒川区日暮里に生まれる
1974 多摩美術大学絵画科油絵専攻卒業
1977 安井賞展出品
1984 浅井忠記念賞展入選
現代洋画精鋭選抜展金賞
伊藤廉記念賞展入選
浜松イメージコンクール優秀賞、買上
1987 日仏現代美術展ソワール賞一席
1989 人間讃歌大賞展優秀賞、買上
1998 北の大地ビエンナーレ佳作賞
2002 一水会展新人賞
2008 一水会展佳作賞 千葉県展県知事賞
2011 日展特選(’13)
2012 一水会展有島生馬奨励賞
2013 一水会展小山敬三賞
2018 一水会会員佳作賞
2024 内閣総理大臣官邸作品陳列「梟」
2025 内閣総理大臣官邸作品陳列「飛翔」
現在 日展会員 一水会会員 千葉県美術会常任理事

