「絵やアートには鑑賞者の心を豊かにする力がある」
「Hope」第4回は、山本水葱(やまもと・なぎ)先生。
山本先生は、2016年、第42回 絵の現在選抜展で銅賞を受賞後ほどなくして、「一枚の繪」2017年4月号より、誌上デッサン画教室の連載をスタートさせるなど、技術的なことはもちろん、じっくりと対象を見つめた先に現れる、存在感のある作品を描き続けていらっしゃいます。現在は、絵画教室や美術予備校などで後進の指導にも当たられていらっしゃいます。新年度が始まって間もないなか、お話をうかがいました。
モチーフの「干からびたネギ」から生まれた雅号
山本先生は、1990年千葉県生まれ。小さい頃から絵が上手な少年でしたが、もっぱらサッカーをしていたそうです。
急展開(?)で美大を目指し、一年浪人した末に、東京藝術大学美術学部に合格。美術に関して幅広く学ぶことのできるデザイン科に進みました。
山本先生の「水葱」というのは雅号なのですが、そのきっかけとなったのは、
とのこと。大学生活の4年間に、さまざまな刺激を受け、良き師の指導、画家としての矜持を学び、描く対象から自身の描くものの核をつかみとることができたようです。雅号に込められたものには、そうした先生の静謐な中に浮かび上がる確たる思いを感じました。
学生時代からすでに、グループ展などに出品をして作品発表を開始。2014年に大学卒業後は、ドイツの文具老舗メーカーのファーバーカステルが主催する、FABER CASTELL ACADEMY at itoya(東京銀座・伊東屋)での講師、美術予備校の講師をしながら作品発表を続けていました(〜現在)。
2016年、一枚の繪主催、第42回 絵の現在選抜展で銅賞を受賞。翌年からは「一枚の繪」誌上でデッサン画教室を連載(2017年4月号〜19年3月号まで)されるなど、確かな技術に裏打ちされた、対象の裏側、対象の奥といった見えないところまでを感じながら描き上げる作品発表し続けています。
絵を描くことはコミュニケーションに近い
作品制作の流れを山本先生におうかがいすると、「一枚の繪」連載のデッサン画教室でもよく述べられていらっしゃったように「いろんな角度から眺め」ること、「モチーフの魅力や面白さ」の発見といったことを、もちろん先生ご自身なさっていて、また、それだけでなく、「新作を作るたびに何か新しい技法ができないか」とチャレンジされていらっしゃるところに、飽くことのない美への求道心を感じずにはいられません。
先生ご自身の作品の見どころをお聞きすると、
陰影をとらえることによって対象の存在が見る側に判然と伝わってくる。光は、実際に対象に当たって反射したものだけでなく、その光源、さらに生命力 −生命の輝き― をも表現しています。画家は、
という思いを携え、絵筆をタクトに通奏低音として、彩色という行為で、支持体を画譜に作品となって私たちを眼福させてくれます。
幼少期に絵を描くことで得た「絵を描くたびに誰かに見せて驚かせたい」という思いはずっと胸中に携え続けていることも忘れてはならないでしょう。
冒頭におうかがいした〈絵とは何か〉〈作品発表することの意味は〉という問いのこたえがここにも述べられていて、絵を通じて交感されるコミュニケーション。作者、作品、観者が並び立ち、「感覚の部分で深く共感する」、作品が発する光が包含する絵画空間を、山本先生は表現したかったのでしょう。 |